Faraday
Faraday

ケーブル聴き比べ大会

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レポートが滞っていたために、いつ頃やったか不明確な「ケーブル聴き比べ大会」の報告。推定では2001年2月10日。その日は私(しらた)は仕事で欠席のため、芦澤さんの報告に全面的に依拠して整理させてもらいます。

Yusen Amp
私(芦澤)の持ち込んだ、飲食店内BGM用AMP(業務用)改です。何と入力セレクタ、トーンコントロール、マイクアンプまで付いています。電源回路周りの構成変更、内部配線交換、コンデンサの変更等が行われています。自宅で鳴らして、結構いい線に行っていると思っていたのですが、いざ会場で鳴らしてみると思いのほか冴えません。結局、後述する田中さんが製作したAMPの方が良い結果が得られたので、当日のメインの座から降ろしてしまいました。勿論、持ち帰ってからチューンし直したのは言うまでも在りません。で、再度持ち込もうかと思ったのですが、現在私の手元には在りません。元々あった飲食店に返してしまいました。リベンジしたかったんですがねぇ...

田中さんの、紅の豚です。ラインケーブルの比較試聴は、このアンプを用いて行われました。この後も随分とバージョンアップされているとの事ですので、音質は現時点とは違います。その内容は、電源部分を中心に手を加えられているとの事ですが、別の機会に田中さんからコメントしてもらいましょう。

下の写真は、紅の豚の内部写真です。信号系統を出来るだけ短くするというコンセプトに基き、筐体後部の入出力端子近傍に、信号系全てのパーツを集中させています。フロントに在るボリュームのノブは、延長シャフトにより、入力端子近くのATT(アッテネータ:ボリュームの事)に結合されます。ATTを通過した信号は、すぐ脇(写真手前)のAMP部に導かれます。

Porco Rozzo

Porco Rozzo
AMPは、外付け部品がたった2個で済むPhillips TDA1552Q が用いられています。従って、この部分のシグナルパスも最短に抑えられています。そして、AMPを通過した信号は、すぐ後ろ(写真だと右側)の出力端子に接続されています。しかし何とまあ短いこと。トータルで10cmないんじゃないかな。

音も、妙な癖や不足感が少ないトータルでの良さが感じられました。スイッチング電源を使用しているとの事ですが、この方式でいつも気になるザラツキ感もさほどありません。結果として私のアンプよりも楽しく聴かせます。うーむ...気合の差かな?いずれAMP対決をしようね(当方、次期主力機鋭意開発中)。

CASTRONという、鋳鉄で作成されたエンクロージャを持つ2WAYスピーカシステムです。旭川の鋳鉄会社が、新規事業でスピーカシステムを作成。東京にデモ巡業に来た際、ファラディに顔を出してくれました。デモ機で在る為、塗装が左右で違います。まぁ、それはご愛嬌。

で、音なのですが、立派な音です。立派で正確で聴感上のS/Nも高く、分離が良くて尚且つ低域/高域共に良く伸びています。しかし、あくまで私の個人的な感想ですが、音がスイングしていません。ものすごく良く出来たアンドロイドという感じです。たとえば、刃物で傷つけたなら血が滲むような熱さが感じられません。

Castron Speakers
でも、気に入った人も居ましたから難しいものです。何事も自分の感性を押し付けてはいけませんね。それに、雑誌等で良く見られる、項目別の試聴テストでの採点をするならば、これはかなりの高得点をGETします。そう云う意味では、実に良く出来たシステムな訳です。

その後の二次会で、アルコールが入ってから、メンバーの鈴木さんがボソッと一言、
「あのスピーカ、見ていたら何だかお水系みたいな...」
どうして君はそんなに鋭いんだ...

尚、CASTRONのURLは、http://www.usui-cast.co.jp です。興味のある方は覗いて見ては如何?


さて、いよいよメインのラインケーブル試聴大会です。レギュレーションをざっと書きますと、

1. RCA←→RCAである事。
2. 長さは基本的に1mである事。
3. 市販品でも自作品でも可。

ってなところです。ちなみに試聴システムは、CDP: DCD-S10U(DENON)→試聴対象ケーブル→AMP:紅の豚(田中さん)→SPケーブル:φ0.8インターホン線を+−別に引き裂いたもの(MATSUI DENSEN)→SPシステム:DDD-S7+専用30リットルエンクロージャ(ALPINE+島田研究所)でした。

Cables

試聴したケーブルを全て並べた状態です。全部で18種類集まりました。色々聴き比べた結果、印象に残るケーブルと、「さて、どんな音だったっけ?それとも、鳴らさなかったんだっけ?(勿論、全部鳴らしましたが)」というものまで、実に様々な個性が感じられました(キャラクタを感じさせないのもキャラクタの一つだと思いますので)。尤も、印象に残らないものに関して、自分自身の中に価値を見付けろと言うのも無理な話ですが...

左から、(敬称略)

1. SONY:500円程度のもの(芦澤持込、安いぞ)
2. 鈴木自作:同軸ケーブル(鈴木持込)
3. 鈴木自作:AT&Tケーブル(鈴木持込)
4. SONY:1000円程度のもの(芦澤持込、少しだけ高いぞ)
5. ACROTEC: 6N-A2110(辻持込、高いぞ)
6. ACROTEC:8N-A2080(辻持込、すんげぇ高いぞぉ)
7. Aurex:型番不明(島田持込、古いぞ)

Cables 1
Cables2

8. BELDEN:型番不明(島田持込)
9. DENON MELTONE:型番不明(島田持込)
10. audio-technica PCOCC:型番不明(島田持込)
11. 芦澤自作 audio-technica AT6A48+PLUG1(チャック式、ちと高い) (芦澤持込)
12. 芦澤自作 audio-technica AT6A48+PLUG2(普通の削り出し品、結構安い) (芦澤持込)
13. 芦澤自作 audio-technica AT6A48+PLUG3(安いやつ) (芦澤持込)
14. 芦澤自作 audio-technica AT6A48+PLUG4(もっと安いやつ) (芦澤持込)
15. 芦澤自作 audio-technica AT6A48(0.75m)+PLUG2(普通の削り出し品) (芦澤持込)
16. 芦澤自作 φ0.4mm単線(0.72m)+PLUG4 (芦澤持込)
17. 櫻井自作 ZILCON-SAND使用セクシー・チューブ (!)
18. 工房スタンダード品(何でもフィデリックスの中川社長がお気に入りらしい)

Cables3
尚、当日は島田先生がLCRメータを持参してくれましたので、これを用いてデータを取っております。測定周波数は10kHzで一通り計り、その後特に印象に残った 1、4、6、11 は、100kHzでも再度測定しました。これらのデータはExcelにまとめましたので興味のある方は参考にして下さい

で、肝心の音なのですが、「価格と特性と音質(特に素直さ、スムースさ)は必ずしも一致しない」と云う事を改めて確認する事となりました。

この文章を書いている特権から、まず私の個人的嗜好に基く感想から云うと、1. が好みでした。まぁ、自分が持込んだ物に対して誉めるのもなんですがネ。とにかく素直。引っかかったり、頭を抑えられる感じも少なく、特有のキャラクタも殆ど感じられません。これは例えばアンプ製作の際にも有効に使えます。何せ、アンプの音を聴いているのか、それともケーブルの音を聴いているのか判らなくなるという恐れは極めて少なくなりますしね。

小村さんは4.が気に入ったとの事。彼は少し引っ掛かる感じが好きなようです。良ーくわかります。1.に比べても少し密度が高く濃い感じです。彼が好む「ズリズリ感」...判るかなぁー?例えばチェロの独奏等で感じられる、弦を弓が細かく、本当に細かく引掻き、弾けながら擦って出される音の感じは、確かに1.よりもこのケーブルの方が良く出ていました。彼にとっては、1.だとその辺りが物足りないのでしょう。それは私にも感じられました。

藤川さんは、11.がお気に入り。このケーブルに使っている素線(audio-technica AT6A48)は、以前に彼から私が依頼されて、RCAプラグ←→φ6プラグケーブルの製作したときに使用した事がありました。その音を聴いた彼は、以降このケーブルが気に入ったのだそうです。今回は同じ素線でプラグのみを変えたものを4種類 (11、12、13、14)用意して聴き比べました。その結果、彼は11.が気に入ったとの事。確かに他の3つに比べて密度が高い印象でした(藤川さん、コメントをお願いします)。私個人としては、14.のストレス感の無い音も良かったと思いましたが。比較的プラグのキャラクタが感じられる結果が得られたと思います。15.は同じ線を短くしたもので、プラグは12.と同じです。その結果は...これが良く思い出せないんだよなぁ。覚えていないって事は、大勢に影響が無いという事にしておこう。

[藤川氏のコメント] 11. とにかく細かい音がよく聞こえてくるケーブルだと思う。これと同じ素線を使ったケーブルは、自宅にて使用したところ、某悪人から中古を定価で売りつけられたオーディオクエストのエメラルドより音の数は断然多かったという結果が出ている。ただ音そのものはニュートラルなので、オーディオクエストのようなテンション高い音が好きな人には物足りないかもしれない。

脅威の高額ケーブルである6.に関しては、これはこれでさすがに価値があると思います。とにかくコッテコテに音を作ってあります。「みっちりと丹念に、担当者が良いと思う音質に作り上げたのだなぁ」と言う事がひしひしと伝わってくるような音です。とにかく音の出方が濃い。とにかく濃い!コテコテコッテリ、コッテリンコ! 音決めをしたのは関西の方なのでしょうか?一言で言うなら、関西お好み焼きのソースとマヨネーズがバッチリ効いた味です。確かにこれに嵌ったのなら、かけがえの無い存在感をユーザに向けて放つ事でしょう。

Fostex PS300

以前から知人より、「FOSTEXの業務用PAスピーカユニットである、PS300が良い音を出すぞ」と聞いていた私は、「何時か聴いてみたい物だ」と思っていました。このときの会合時「コイズミ無線に頼んでユニットを借り、聴かせてもらおう!」と思い立ち、社長と交渉。めでたくユニットの音を聴ける事となりました。

ユニットの聴き方は色々ありますが、わざわざ箱を用意するわけにもいきません。そこで写真の様に胡座をかき、ユニットを抱えて、上に出来る隙間にフェルトを掛けて聴きました。この聴き方はある人から教わった方法で、ユニットの素性が良く判る手法です。但し、持っている人間には、必然的に正面からの音を聴く事が出来ないというデメリットが生じますけど。

そしてその音ですが、これは確かにすごい!「FOSTEXもこんな音のユニットを作る事が出来たんだ!」と、思わず唸るようなドライブ感です。分離も良く、芯がもつれて団子になる感じもあまりありません。当然、音の構築もがっちりしており、スイング感も不満ありません。これだけのユニットを作れるのだったら...これ以上書くのは止めておきましょうね。

この試聴の後、参考までにDIATONE P-610も同様に鳴らしたのですが、まるで次元が違います。もっともこちらはブチルゴムをベタベタと貼ってあり、オリジナルとは違う状態でしたので、あくまで参考にしかなりませんが。

PS300と同じ聴き方で、ALTEC 405-8H (芦澤個人所有物)も聴きました。但しこのユニットは、振動板に墨を塗りたくってあります。このユニットは元々キャン付く癖があったのですが、以前に手持ちの墨を少量を塗って良い感触が得られたので、とことん塗ってみようと思ったのです。結果は...「過ぎたるは及ばざるが如し」...いくらなんでもやりすぎました。以前よりも更にキャン付いてしまい、とても聴けたものではありません。こんな事なら何も塗らないほうがマシでした。反省してます。
ALTEC 405-8H
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