カセットテープ経年試験報告 /Mar 15, 2000
私のオーディオ人生第一期は中学生から高校生にかけてです。時代的には80年代前半くらいですか。そのころはFMエアチェックや貸しレコード屋全盛期にあたり、カセットデッキは必需品でした。
そのころ使ったデッキは、確かテクニクスRS-255X、とAKAIのうーんなんだっけなぁというものでした。RS-255Xは、dbxというマイナーなノイズリダクションシステムが乗ってまして、うたい文句はダイナミックレンジ100dBとかいうものでした。確かにdbxをONにするとヒスノイズが全く聞こえませんでした。ブリージングも批判されていたほどひどくなかったと思います。それで愛用していたわけです。もっぱらレコードからのダビングに使用していました。AKAIのなんとかかんとかは、オートリバース機でDolby-C登載。長時間のFMエアチェック用でした。
というわけで、私の青春時代を甦らせてくれるカセットテープのコレクションがそれなりにはあったわけです。CDで再発されたようなものは、だんだんとCDに置き換えましたが、どうしてもCDで再発されないようものやFM放送は、もう入手のしようがありません。
で、もう30歳もすぎてからカセットデッキを改めて探しだしたのですが、これが困った。わたしのコレクションにはdbxとDolby-Cが混在しているのです。Dolby-Cはいま入手可能なカセットデッキでもざらに手に入りますが、dbxはなかなかないわけです。しかも両方を備えているデッキなどにはお目にかかれませんでした。
で、ある日Faradayのミーティングに出てみたら、部屋にカセットデッキが無造作に置かれてまして、調べたところなんとなんとdbxとDolby-Cを両方備えたオートリバースデッキでした。「デジタルなんたら」とパネルに書いてありますからおそらく最末期の製品でしょう。で、持ち主をしらべたらコイズミ無線の社長さんでした。で売ってもらいました。それがこれです。
マランツ SD-64という型番です。
動作確認しましたが問題ないようですし、筐体をあけて掃除してもあまり埃が出てきませんでしたから、大事に使われていたというよりも、社長さんは買ってからほとんど使わなかったんではないでしょうか。
で、青春時代に流れていた思い出の曲を聞こうかと昔のカセットテープをプレイしてみますと、当時とほとんど同じバランスで鳴るものと、帯域バランスが崩れてしまってノイズリダクションをOFFにしてどうやら聴けるものに分れることがわかりました。
まあ、カセットですから、録音機器と再生器機の相性やら、アジマスやら、ノイズリダクションの動作点やらなんやらありますので、比較する意味はないかも知れませんが、傾向を報告しておきます。
もっとも優秀なのはTDK。メタルのMAやMA-Xは当時の記憶の中にある音とほとんど違いません。ハイポジのSAも優秀。思いのほか素晴らしいのがノーマルのARで、これはまったく劣化を感じさせません。FMエアチェックのADは高域が鈍る感じがありますがほとんど問題なし。さすがTDK。
マクセルはハイポジのものしかありませんが、高域が鈍った感じがするのでノイズリダクションをOFFにして聴いています。デンオンやソニーは一本もなかったので評価不可能。
よくないのが太陽誘電すなわちThat'sのテープ。いずれも高域が落ちてしまいノイズリダクションをOFFにしないと使えません。あと優秀なはずのTDKで思いのほかよろしくないのが二層構造だったSA-Xです。これはダメダメ。太陽誘電とおなじような劣化具合です。
もうHi-Fiとしてのカセットは終わっていますので、いまさらカセットテープを聞こうかという方はあまりいないかと思います。とはいえ思い出のあの曲がちゃんと聴けるかどうか確認されてみてはいかがでしょうか。
(しらた)
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