●講義の方針・目標
字義どおりに「情報文化」という枠で内容を考えると、それはあまりにも広大な領域となる。そこで、「情報文化」を社会へのコンピュータの普及に関連して形成されてきた思考様式、行動様式、慣習、風俗として把握したい。
本講義は、情報化社会における社会制度と法を考える基礎として、社会とコンピュータの関わりの「これまで」と「これから」をありのままに把握することを目指す。
●試験・成績評価
試験は行わず、レポートで成績を評価する。なお、レポートの提出はWebを使った方法に限定するので、E-mailおよびWebの利用がまったく不可能な受講生には不向きである。
適宜課題を出題する。
●テキスト・参考書
参考書として以下のものを掲げる。また、各種コンピュータ関連雑誌・書籍およびインターネットに公開されている業界動向について継続的に情報収集することが望ましい。
夏井 高人, 「ネットワーク社会の文化と法」
富田 倫生,「パソコン創世記」
椹木 野衣,「シミュレーショニズム --- ハウス・ミュージックと盗用芸術」
椹木 野衣,「テクノデリック --- 鏡でいっぱいの世界」
アスキー編集部,「モンド・コンピュータ」
藤幡 正樹,「アートとコンピュータ」
渡辺 誠,「流体都市」
Steven Levy,「ハッカーズ」
●受講上の注意事項
前期末に最初のレポート提出を義務づけるが、そのときにはWebを利用した方法しか受け付けない。それゆえ、前期末までにE-mailおよびWebの操作を習得しなければ単位を取ることは不可能である。
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●授業計画
前期
コンピュータを使った教材を使用しながら、以下のような内容について講義をすすめる。おおよそ、パーソナル・コンピュータ発展の歴史をなぞることになる。
- 情報文化とはなにか?
ガイダンス/「情報文化」とは何を指しているのだろう?
- コンピュータのロマン時代
--- 貴族の娘と発明狂:
コンピュータが生まれる前史には、
「知性を機械に置き換える」という情熱が常に動力として存在していた。
- 世界大戦時代の計算戦争
--- 戦争を計算した機械たち:
私たちが抱いているコンピュータに対する否定的イメージの源泉を探る。
- 古き良き時代のハッカーたち
--- 本物のハッカーの黄金時代:
コンピュータ黎明期に青春と人生をコンピュータに捧げ尽くしたマニアたちの
理想について考える。
- ガレージででっち上げろ!
--- パーソナル・コンピュータの誕生:
パーソナル・コンピュータがなぜこの世に現れたのか、
その時代精神と意味について考える。
- ちょっとした思い付きの新商売
--- 会社やろうぜ!:
パーソナル・コンピュータがビジネス化していく過程の
なかで、様々なビジネスモデルが模索された。その消長
をみながら、現在もなお残る、フロンティア精神について
考える。
- いまだ実現されない昔の夢
--- 時代の先覚者たち:
私たちが使っているコンピュータの形態はすでに20年以上前に完成していた
現代につづく彼らの強烈なビジョンの源泉を探る。
- UNIX文化、UNIXとの生活
--- UNIXという文化:
現在のネットワーク文化の軸となってきたUNIX。
その誕生の背景と、このOSに青春を費やしてきた
若者たちの目指したものについて考える。
- Think GNU!
--- フリーソフトウェアと最後の真正ハッカーの理想:
なんとなく使っているフリーOSやフリーソフト、その背後に存在する哲学と
理想について考える。
- オープン・ソース
--- 世界同時ソフトウェア開発革命:
現在のビジネス・シーンを揺るがしているLinuxに代表されるオープンソース。
この活動が及ぼしつつある大きな変革について考える。
- アンダーグラウンド
--- ネットワークの暗黒面:
現実社会と全く同じように、ネットワークにも悪い人たちが
いる。悪い人たちというのは、どんな人たちなのだろうか。
そして、どんな悪いことをしているのだろうか。
- 「もう一つ」の考え方
--- カウンター・カルチャーというもの:
カウンター・カルチャーはコンピュータ関連に限られるもので
はない。それでも、コンピュータは、カウンター・カルチャー
に大きな影響を与えている。その意義について、いくつかの事
例を挙げながら検討する。
- そして「みんな」がやってきた
--- ネットワークの一般開放の波紋:
1995年。Windows95発売のカウントダウンに象徴されるように、
コンピュータ利用者の爆発的拡大とネットワークへの洪水のよう
な参入が始まった。一般社会の常識とネットワークの常識のぶつ
かり合いの中で生じてきた新しい価値観について考える。
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