Book Review
NOTE

知的財産権に関するもの

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以下の記事は以前に私がfj.soc.copyrightに投稿した記事です。

こんにちは。お久しぶりです皆様。

さて、ここには著作権に関する多数の論客がいて、日夜熾烈な議論(笑)が続 いているわけでありますが、マルチメディアあるいはサイバースペースにおける 著作権制度に関する新書が最近相次いで刊行されていますね。本日は、久しぶり に時間が取れたので軽い読み物として、

名和小太郎, 「サイバースペースの著作権: 知的財産は守れるのか」中公新書

を読みました。皆さん読みましたか?これはここで議論をしているような理論 側の人だけではなく、専ら仕事の道具としてコンピュータを使っている普通のユ ーザーや技術者の視点からの著作権制度の現状に関する分析です。今年の春に出 版された

中山信弘, 「マルチメディアと著作権」岩波新書

への名和先生からの返事、というか中山先生が生っ粋の法律家であり、法律家 の理論的考察範囲のギリギリの線で議論しているのに対して、名和先生は、もと もと技術畑の人ですから、その辺の制約を軽やかに乗り越えて議論してらっしゃ います。コンピュータの達人の人には名和先生の議論の方が気持ちよく響くはず。 一方、著作権法を勉強された方には、中山先生の議論の方が呑みこみやすいはず です。名和先生は、アメリカにおける具体的事例や、アメリカでの法律制定にお ける審議会の様子など、分かりやすく記述しています。プラグマティズムの伝統 に基づいた現実重視のアメリカの司法・立法過程、幅広い議論を集める態度を紹 介しています。一方、ベルヌ条約体系理論の行き詰まりなども指摘されています。

これを読めば、なぜアメリカがフォノレコード以来の商業芸術の世界で大成功 し、コンピュータネットワークの応用で先陣をきって世界をリードし、かつ、コ ンテンツビジネスで世界に覇をとなえつつあるのかが、すぐに分かります。日本 がどうもネットワークビジネスで動きが取れないのは技術面だけの制約ではない のがよくわかります。

ここでの議論では WWW や Netnews での著作物の扱いがよく話題になりますが、 「法は些事に関せず」という法諺を心におきながら、上記の 2 冊の本くらいは 読んだ上で、議論していった方が実のある議論ができることでしょう。

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