Communications of Faraday!

*Musical Fidelity A-1レストア報告 /Feb 29, 2000


83年ころ発売されて、安価な純A級増幅アンプとして定評のあったMusical Fidelity A-1のレストアのお話。使えるものは長く使おうということですね。

私のA-1は、96年にジャンク状態で購入し、97年に電解コンデンサの総取り替えや、壊れてしまったセレクタ用ロータリースイッチの除去、アルプスのデテントVRから東京光音電波製ATTへの変更などを行ないまして、それからは手をつけていませんでした。しかしながら、98年に製作したOpAmp OPA627を使用したプリアンプがシステム全体に与えた好影響を実感し、A-1の初段というか最初に信号が投入されるOpAmpのグレードアップを99年からずっと計画していたのでした。同時に電源の整流ダイオードを標準品からノイズの少ないショットキーバリアダイオードに交換することも計画していました。

ところがA-1は、特異というか変な放熱構造をとってるため、蓋を開けたり基板を弄ったりすることがとても難しい構造をしており、なかなか着手する気になれませんでした。

ところが芦沢師匠からOPA4134や、OPA404、LM837といった高性能OpAmpの代替品を吹き込まれているうちに計画はだんだんと具体化し、先日ついに意を決して蓋を開け、初段周りの回路図作成に着手しました。下に回路図を示します。

Schematic1


数年振りに蓋を開けてみると、昔の仕事の汚さに赤面する思いです。少しそのへんも手を入れました。

回路はQuadのOpAmpを一個使いで、反転二段増幅を行なっています。コンデンサはなし。発振が心配されます。最初の一段目でゲインを下げ、次の二段目で増幅率を変化させることで音量を調節するという、まさに鬼才ならではの回路設計。とはいえ、このATTを含む帰還ラインが構造上往復12cmもあるなど、精神衛生上悪いような感じになっていました。

さて、OPA4134やOPA404の入手ができなかったので(頼むよ若松さん)LM837を入手、また必要な抵抗や電源パスコンになるマイカコンも準備しました。

まず整流ダイオードの交換。これは単に置き換えるだけですから、作業は簡単です。一応、念のためのダイオードをテスターであたってみたら、もともとついていたダイオードは順方向抵抗が大きかったのに、新しいダイオードは順方向抵抗が小さく、なるほどダイオードも優秀になったんだなぁと思いました。

次に、本題の初段周りです。まず単にTL084をLM837に置き換えるだけ、という改造法があります。しかし、先に述べたATTまでの長い引き回しが気になります。次にユニバーサル基板に組んでATTのそばに配置するという方法があります。これだと信号の流れは合理的になるのですが、ユニバーサル基板を収めるスペース確保に一工夫必要でした。

そこで採用した方法は、なんとATTにLM837を直付けし、そのICに抵抗やコンデンサを直接取り付けるというもの。これなら帰還系を最小限の長さにすることができます。で、作業2時間ほどでATTに初段回路がくっついたブロックができあがりました。このブロックとA-1の基板との配線は電話線をバラしたもの。下図は部品取り付けのイメージ。図は不正確です。

Attenuator

パスコンしたので発振はないと思いましたが、とりあえず組み上げて壊れてもよいスピーカーユニットを接続し、CDPから信号をいれます。ドキドキ。あ、音が出てきました。発振もないようです。蓋を閉め、もとのようにシステムに設置し、本式に音出しです。

ナーイス! 全体に音がくっきりしましたし、とくに低域の制動感がぐーっと増しました。これは大成功です。ドラムやベースのはじける感じがとても良いです。それまでCDP直結なので音が薄い感じがするのかと思っていましたが、この改造によってその必要はなくなりました。今回の改造では、OpAmpに対する給電周りは弄っていません。しかしながら先に作成したプリアンプと同じような音の傾向になったことを考えますと、OpAmpとその他の素子を最短距離で配線するという構造上の特徴が音の傾向に繋がっているのではないか、と考えました。

(しらた)

----------- * -----------